相棒

相棒

 

この道、22年。

 

鋏を握りしめて19年。

 

毎日、色々な髪と相棒は語る。

 

「今日は、そんなに切らなくていいよ。」

 

「あまり調子が良くないから10㎝くらい切ってよ。」

 

なんていつになく普通の会話が私の前で、毎日繰り広げられる。

 

そんな相棒と髪の会話が聞こえてくる中、私も会話にはいる。

 

3人で会話をしながら状態を見極め、相棒(鋏)と私と髪の

 

状態を見極める。

 

どんなカットがいいのか?

 

ブラントカットか、チョップカットか、

 

それともスライドカットか、エフェクトカット。

 

相棒と私は、数種類のカット技術の中から

 

髪が最高に喜ぶヘアースタイルを作り出す。

 

チョキチョキと。

 

そんな中、最近私の相棒の調子が悪い。

 

なんだか以前より切れ味が悪くなったような気もする。

 

そんな相棒は、最近は研ぎに出す期間も早くなってきたような気がする。

 

切り方も変わっていない。

 

研ぎ師も変わっていない。

 

「最近調子悪いのか?」と聞いても

 

「そんなことないよ。」

 

と、相棒と話すことが増えたような気がする。

 

相棒のことを考えたら、気が付けば

 

17年の付き合い。

 

毎日食べていくのがやっとだったころ

 

どうしても、鋏がほしく買って更なる極貧生活をしていたのを

 

覚えている。

 

相棒は誰よりも私の仕事のことを知っている。

 

何度練習しても、うまくスタイルができなく悩んでいたころ。

 

お客様を怒らせてしまったこと。

 

お客様が凄く喜んでいたこと。

 

そして、私の指から何度流血したかわからない。

 

止まらなくて、いつもアロンアルファで

 

傷口を塞いでいたことか。

 

思い出は多い。

 

私の体一部である相棒。

 

そんな相棒も、いよいよ現役を引退させて上げようと

 

思う。

 

17年間自分の体を削りながら、沢山のお客様を喜ばせ

 

刃先はどんどん短くなり、今や研ぎすぎて鋏屋も

 

「あと一回研げるか?」

 

そろそろですね~なんてよく言われる。

 

相棒と切磋琢磨してきた昔が頭をよぎる。