お客様の涙

お客様の涙

 

今日、新規のお客様が来店された。

 

数日前に店に一本の電話が鳴った。

「髪のダメージで相談したい」

  

若い女性が、深刻そうな声で、

必至で訴えかけているのが伝わってきた。

 

 どうにか悩みに答えたいと思ったが、髪の毛を見ないと

何とも言えないので、予約の日時を決め来店してもらうことに。

 

 

本日お客さんが来店された。

 

お客様はソファーに座り、髪のことをいろいろ話しはじめた。

内容を聞いていると、唖然とした。


 内容はこうだ。

一週間前に、いつも行く美容室に行った。

注文は、「いつものように」と本を読みながら、気がつくと、

髪の毛がチリチリになりボサボサになっていた。


「鏡を見ると髪の毛が痛み、

セットがうまくできず、毎日が苦痛でしたと・・・・・・」

 

 見てみると、中々街ではみかけないヘアースタイル。

 

まず、髪に対するコンセプトが何かがわからなかった。

 うまく説明出来ないが、

 

 

 後ろの髪は、肩下20㎝センチ以上あるのに対して、

横が10㎝もない、トップも10㎝位で、

トップはお客さんがブロー出来ないくらいの

クリクリしたパーマがかかっている。

 

お客さんの年齢、ファションなどを考えてみても、

 私には理解ができなかった。

 

 これを見て、

「どんなヘアースタイルに、したかったんですか?」

 と聞いてみた。

 

お客さんは、

「何も言ってないし、おまかせでしたから・・・・」

と答えた。

 

さらに聞いてみると、

 最初はサイドもトップも長かったみたいだ。

 

 推測だが、ダメージしている髪に、

 パーマとカラーを同時に施術してしまったせいで

 髪がチリチリになり、傷んでいるところを

 どうにかしたいと思い、整えているうちに、

 スタイルもおかしくなり、

 だんだん短くなったのではないかと思う。

  

 髪を修復するにあたり、もっと詳しく聞いてみる事にした。

 

お客様は、下を向き悲しそうに話し出した。

 

一度、家に帰り鏡を見たお客様は

やはり納得出来ず、もう一度美容室に行ったらしい。

 

勇気を振り絞り、担当の美容師に

「この髪、もう少し何とかなりませんか?」と言った。


そうしたら、「これ以上、治せません!」と

 冷たい言葉を浴びせられたのだ。

 

 

私はビックリしてしまった。

 

 

私は、美容師を16年やっている。

 正直、自分で納得した技術を提供できなかったときもある。
 

そういう場合は、

「もう一度、時間を作ってもらえないですか?」

 頭を下げることもある。


それを、一言で

「治せません!」という美容師も居るのは、事実。

 

  

 確かに、至る所に美容室がある時代で

低価格化が進み、研修に時間もかけられず、

スタイリストになる場合もあるくらい。

 

 

実際、こういう相談も多い。

 

ただ、私は「お客様に喜んでもらいたい、感動させたい。」

これが、私の気持ちなんです。

 

私は、自分の信念に基づいて頑張っていきたい。